このたび長女が大学を卒業しました.
長女は 工学部建築学科 卒業です.※化学系ではありません.
長女が大学生になったのは2013年4月のことでした.
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そして4年の月日が流れました.一瞬でしたホント一瞬.
卒業式会場は日本武道館でした.4年前の入学式と同じ会場です.
この機会に,工業化学に関する大学教育を受け,化学に関係する仕事をしてきた私から見た,建築学科の娘の4年間を振り返って,思い出すことなどを
4年の月日
この世界の仕組みを知るよりも,この世界に何かをつくりたいっていう考え
理工系と一括りにされている人々の中には「この世界がどういう仕組みになってるのかを知りたい」っていう人々もいれば,「この世界に何かをつくりたい」っていう人々もいます.その間にもいろいろな人々が.
私は両方足して2で割ったあたりに興味があって,DNAとか蛋白質とかを理解することによって生命の仕組みを探ることができないだろうか,っていうあたりに興味をもちつつ,これまで誰も考えたことのないような分子レベルの仕掛け を創ってみようか,なんていうあたりに興味があります.
一方,私の長女はというと,完全に「この世界に何かをつくりたい」に興味が向いています.
細胞の中でミトコンドリアがどうなっているとか,宇宙の果てがどうなっているとか,メタン分子のsp3混成軌道がどうなっているとか,そういうことには全く興味がなく,建物とか,街とか,大規模な構造体をつくることに興味が向いています.
我が家の私の書架には化学や生命科学の専門書が並んでいるのですが,これまでに長女が関心を示したことは一度もありません.
私は街づくりとか地形とか都市インフラとかにも学生時代から ちょこっと興味を持ち続けていて,そういう本も同じ書架に並んでおり,そのあたりは長女の興味のアンテナにひっかかっています.
そのすぐ近くに並ぶ「ファインマン物理学」とか「細胞の分子生物学」とか「有機電子論解説」とかは,視界に入っていても認識されていない模様.
その中で唯一興味を示したのが,「JIS 機械製図の基礎と演習」っていう,私が大学1年のときに履修していた工業図学の教科書だけでした.
「この世界がどういう仕組みになってるのかを知りたい」と「この世界に何かをつくりたい」は別なのです.
同じ世界で生きているけど,世界を見るために使っているものさしのスケールが違うし同じものごとを別の言葉であらわすし
長女が前期試験の勉強をやっている.熱環境がどうのこうのっていう演習問題で,熱量の単位に Btu を使う計算が出てきて面倒な思いをしてるので,Btuとセットで使う温度の単位が ℃ ではなく華氏 °F だということを教えて絶望させておいた.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年7月27日
化学系の学生が化学熱力学のあたりで学ぶものごとを,建築学科では室内環境と空調との関係のあたりで学んでいるようです.
科目名を変え,適用する対象を変え,実は化学系の学生と建築学科の学生とは同じことも学んでいるっていうことを何回かに分けて私は知ることになりました.
建物の柱にかかる力がどうのこうのっていうのは,有機材料化学か何かで似たのを勉強した記憶があり,室内での空気の流れの性質がどうのこうのっていうのは,化学工学の何かでワケわかんない式が出てきてアレだった記憶があり.
研究概要とか研究発表要旨とか,そういう感じのアレを建築系では「梗概(こうがい)」と呼ぶらしい.化学系 & 生命系の私はこの言葉を博士課程修了から20年後に知った.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2016年9月30日
長女の卒業が近づき,私はこの人生で初めて建築系の人々の研究要旨というものを見たのですが,まず「要旨」と呼ばずに「梗概(こうがい)」と呼んでいて最初は何のことだかわかりませんでした.
「こうがいのこうせいがわかんないので書き方をおしえて」と言われたときは日本語でおkって答えましたよ郊外? 公害? 口蓋?
コレがローカルルールと自由裁量の混ざった混沌とした状況でした.緒言→実験方法→結果→考察→参考文献,になってないし! たしかに設計とか現地調査とかだったら「実験方法」は書けないし.
なんて考えているうちに卒業論文が片付いて卒業式になっちゃったので,修士論文の頃にこのあたりの理解を整理しようと思ってます.
SI単位はステキ.専門領域を超えて同じ理解ができる.エッフェル塔もDNA分子も同じルールで長さを表現できるんだ!昨日,長女と二人で江戸東京博物館に行ったら,100年以上前のエッフェル塔の設計図(の写し)が展示されていた.長さをあらわす単位はメートル.「メートル法で記されているから100年後の日本人が読んでもわかる!」とテンション↑↑ であった.SI単位ばんざい!
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2012年3月31日
いろいろ教えたし,いろいろ手伝った
長女には,私がいなくても自分のことは自分でできる人間になってもらおうと思い,進学先が決まった瞬間からアレコレ世の中の仕組みを教えました.
【初体験】大学生になった長女といっしょに銀行に行き,ATM利用の初体験を見守りましたよ.それから,オートチャージのパスモを利用するために必要なクレジットカード申込書にサインさせましたよ.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年4月3日
じぶんのことはじぶんでやらないとダメなんです.
建築学を学ぶ長女のために製図板を設置したよ! http://t.co/GbuLh92ZIh
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年5月4日
化学系の私には,こういうのが非常に新鮮でした.未知の世界☆
これ以降,コンピュータ関連で何かを手伝うことはありませんでした.長女に買い与えたMacBookProのセッティングを始める.工学部生なんだからこんなの自分でやらないとアレである.しかし,長女のために何かをしてやる機会ってのが,残りの人生に大して残されていないことを考え,作業に取り掛かる. http://t.co/SaZovQAHtH
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年5月11日
図面を引くのは私にはムリなんですが,切り貼りとか片付けとかそういう作業を手伝ってくれと言われることがありました.長女,建築学科の製図の課題に取り組む夜. pic.twitter.com/zr7acrITIV
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年9月14日
卒論は手伝いませんでした(そもそも手伝えることがない),修論もおそらく.結局,大学1年生になっても課題を父親に手伝ってもらっている長女であった.図面づくりのお手伝い.卒業論文とか修士論文とかも手伝うことになる可能性大.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年8月28日
卒業論文と賞状を持って帰ってきたのは4年生の冬のことでした.
グループワークで設計したり図面を描いたり模型を作ったりして,ソレを学内外のコンテストで競うっていう日々だった模様なのですが,その何かで選ばれた何かの賞状と,卒業論文(製本バージョン)とを持って帰ってきた日があります.
6才のころに「1たす1」を教えるところから始まり,理科の自由研究を私がいっしょにやり,高校時代の理工系大学受験数学「置換積分スピード競争よーいどん☆」あたりまでいっしょにやりながら教え(計算処理速度は数日で抜かれた)た長女が,工学部の卒業論文を持って帰って来るっていうのは,間違い無くこの人生における大きな喜びの場面の一つです.
【そんなので】長女に数学を質問されたときの対応:「とりあえず両辺のlogをとってみようー」「微分してみよー」「いちばん次数の高いので割ってみよー」「定義に戻ってみよー」「次の問題を先にやろー」「数学あとにしよー」【いいのか】
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年2月16日
ものごとの考え方
大学教員としてアレ大学生になった長女から選択科目の選び方を尋ねられたので,「先輩がススめてるのは初回に様子を見に行け」「先輩がヤメろって言ってるのはワケアリだからヤメとけ」「1限は朝がキツいぞ」の3点を教えておいた.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年4月7日
父親としてアレ今日は長女(大1)とアウトレットモールに行ったよ! 下着店にも行ったよ! 店内にびっしり並ぶブラジャーやショーツって,とってもカラフルで,サーティーワンのアイスクリームみたいだよね! チョコミントとかベリーベリーストロベリーとかポッピングシャワーとか.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2013年4月14日
理科大にはときどき「ぱんきょー留年」っていう人が出るとのことで,1年の一般教養文系科目を3年とか4年とかまでズルズル持ち越して,卒業が遅れる人々もいるとのことです.長女(大1・工学部)が「ぱんきょー文系科目まじヤル気が出なくて単位ヤバい.あーいうののどこに興味を持てばいいのか意味不明」と言ってきたので,苦し紛れに「文系の人々がどのようにものごとを考えるかの勉強だと思え.将来仕事でお付き合いするだろ文系大学出た人々とも」って答えた.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年1月26日
長女もその一員になる可能性大だったのですが,3年生に進級後,「選択と集中」and「火事場の馬鹿力」で文系科目の試験勉強をやっつけ,ミラクル単位取得→進級→4年で卒業☆
長女の成績表が大学から送られてきたので開封の儀を執り行い,内容を確認し,「今後も適当にアレしなさい/うるさいこと言わないんで/自分の人生だし」とだけコメント.で,私の学部時代の成績表も引っ張り出して来て一緒に見て,「あー,親子で文系一般教養がアレ」ってわかって笑って寝るところ.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年3月22日
成績表に記されている過去の記録より,私は未来のものごとを考えたいのです.建築学科の長女が,今月下旬に前期成績発表がどうのこうのって言っていたので,「おまえの学業成績には全く興味がない.興味があるのは,未来の世界でおまえがどのような建物を創るかだけだ」と答えておいた.もう成績表をチェックすることもない.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年9月14日
成人したし
どの駅からスタートしようか【勝利宣言】娘の父親になったとき「そのうちに父親を嫌いになる日が来るから覚悟しろ/成人式までに父親嫌いになる日が来なかったら逆立ちして山手線一周してやるw」って言ってた連中に約束を果たしてもらう日が来た. pic.twitter.com/ums3G5Y0ys
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2015年1月12日
今もわかんない.長女は,気に入った靴下1足を探すためにビルの7階から地下1階まで私と一緒にスキャンしたり,ワンピース1着を選ぶためにアウトレットモールで何時間も私を引きずり回したりするのに,一生に一度の成人式の着物は1件目の店の2着目で「めんどくさい」の一言で決めたので,女心マジわかんない.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年1月13日
長女といっしょに投票会場へ.長女が人生で初めて投票する場面をみる. #選挙 pic.twitter.com/dkfaMmzWMt
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年12月14日
#父の日 長女がスパークリングワインをかってきたので一緒に pic.twitter.com/q37x6fxNTR
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2015年6月21日
ワインが好きなのは私に似たのかもしれません.※私は外出先では飲酒しないワインを飲みながら人生について長女と考える時間終了.人生は偶発的な出来事で溢れているっていうことと,人生は客観性のモノサシではななくて,主観性のモノサシで測るものだっていう話.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年9月20日
運転免許も取ったし
今日は長女に「カーナビ」と「夜道の運転」と「ガソリンスタンドでの給油」を教えた.「運転する方がBGMを決める」というルールも作った.長女がハンドルを握ってる間,浜崎あゆみを聴かなければならない.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年7月21日
ドライブスルーの帰り道,助手席の娘がフライドポテトを1本ずつ口に運んでくれる.1本ずつ交代で食べる.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年9月6日
「俺がジジィになっても これをやってくれるか?」
「あ,介護ね」
「・・・・・」
女は現実を見て生きている.男は夢をみて生きている.
結局,この翌春に買い替えました.長女がつくってくれた夕食を食べながら少なくとも4年先の赤いスポーツカー(またはセダン)購入計画について話し会う野島家. pic.twitter.com/9WZS9wyTtN
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2015年8月11日
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幸せを追求すべし
人生においては幸福を追求すべし.長女と幸せの形について語りあってるうちにこの時間ですよグッドナイトですよ今夜みる夢が初夢らしいのでリクエストはステキな夢☆
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2014年1月1日
人生においてもっとも重要なことは「自分自身の幸福を追求すること」って考えてるんだ.誰かを幸福にできるのは幸福を知っている人だけだし,この世界を幸福な場所に変えて行くためには,幸福な人が増えることが必要だし,そのためには幸福を知っている人が必要だし.
— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2016年11月10日
そして大学院へ
そして 大学院修士課程 へと,つづく.