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興味をもってきたものごとアレコレの記録

小さな子供の心の中に隠れている意地悪な悪魔:デビル・イン・ハー・ハート

2000年夏,次女1歳

小さな子供は天使だって言っている人もいるけれど,その天使の心の中には意地悪な悪魔が隠れているかもしれないよ,大人を困らせて,くっくっくっ,て喜ぶ困った悪魔がね!

2004年:5歳と10歳

「ねえねえ,あたしとお姉ちゃんとどっちが好き?」
「どっちも好きだよ」
「それじゃだめ! どっち?」
「どっちも好きだよ」
「だめ!」

やれやれまた始まったよこれが.わかってるわかってる,この答えを知りたいわけでもなければ,じぶんのほうが好きだって答えて欲しいわけでもなく,ただ大人が困っているのを見て楽しんでいるんだよね,きみの心の中に隠れている小さな悪魔が.

「あたしとお姉ちゃんとどっちが好き?」
「比べられないよ」
「それじゃだめ!」

2時間経過.

今日はしつこいな.いつもなら途中で電池が切れてソファに倒れ込んで寝ちゃうとか,なんか適当なおもちゃを引っ張り出して来て遊び始めるとか,テレビつけて子供番組やってないか探したりするのに.

「あたしとお姉ちゃんとどっちが好き?」
「どっちも好きだよ愛しているよ」
「だめ!」

あーもー! これ,付き合ってると永遠に終わらないんだよね,永遠に! その一方で人生は有限だから,こんなのいつまでも続けている場合じゃないんだよ.っていう話が伝わるのは,永遠だとか有限な人生だとかいった概念を持つ相手にだけだから,この状況では勝ち目がないんだよ.おかしいんじゃないかな,成長して高度な概念を身に付けると不利になるっていうしくみになっているのは!

「あたしとお姉ちゃんとどっちが好き?」

あー! もー! しかたがない!
「いいかい? お姉ちゃんには秘密だよ,次女ちゃんのほうが好きだよ,いいね.お姉ちゃんには秘密だよ,大事なことなので2度言いました」

やれやれやっと開放されたよ.もう夕方じゃないか.
なんか胸が痛むよ.嘘をつくのはいやだよ.
自分の子供に嘘をつくのは,もっといやだよ.
そして,長女を裏切ってしまったような気がしていやだよ.
こんなしょうもないことで傷付いたり悲しんだりする長女じゃないけど,私はいやだよ,次女が生まれる前から一緒に築いてきた信頼と愛情と思い出を否定しちゃったような気がするよ.
ごめんよ長女,愛しているよ今も変わらずにアイ・スティル・ラブ・ユー・ベイビー

2022年:22歳と27歳

「それ,覚えているよ! 私が幼稚園の頃だ!」
「なんだ,覚えていたのか,で,どうだったんだ? 姉さんよりも好きだって言われて,納得したのか?」
「納得できなかったよ!」
「え? じゃ,どう答えれば良かったんだよ?」
「二人とも好きだって答えなきゃだめじゃないの!」
「おいおいおい,誰だよ,それじゃだめだって何時間にもわたって主張したのは」
「私だよ! でも,ダメなんだよ! ひどい親だと思ったよ,じぶんの子供を比べるなんて! ぜったいにだめだよ!」
「あのな,それじゃなんだ,どっちー,どっちもー,どっちー,どっちもーっていうのを永遠にやれっていうのか? 永遠にだぞ,永遠!」
「そうだよ,永遠にやらなきゃだめだよ!」
「おいおい,そうするとあのまま夜が来て,朝が来て,また夜が来て,また朝が来て,巡る季節の中で延々とあれを続け,カレンダーが何枚も何枚もめくれる中であれを続け,今もここで続けているぞ,どっちー,どっちもーっていうのを」
「そうだよ,とにかく自分の子供を比べたらだめだよ.私,傷付いたよ,そんなひどい親だったのかって.お姉ちゃんがかわいそうだよ,私,お姉ちゃんに言いに行ったんだよ,お父さんがお姉ちゃんより私のほうが好きだって言ってるよーって」
「おい! でたらめじゃないか! ひどいのは誰だよ!」
「えへへー」
「で,姉さんはなんか言ってたか?」
「ふーん,でおしまいだったよ」
「そうかそうか,それは良かった.じつはだ,きみがそういうことをやるっていうことはすでに予測していたんだよ.だから姉さんにはボンタンアメを渡してあったんだ.姉さん,ボンタンアメ好きだからね!」
「ボンタンアメ?」

1999年:0歳と5歳

1999年初夏,長女4歳,次女0歳

「お姉ちゃんお姉ちゃんここにボンタンアメがあるよー!」
「わーい,あたしの大好きなボンタンアメー!」
「はい,1個あげよう.ところで今日はお姉ちゃんにお願いがあるんだ」
「なーにー? (もぐもぐ)」
「きみの妹のことなんだけど,言葉を覚えると小さな子供っていうのは大人を困らせることを言い出すんだ,きみだってそうだったんだけど,ママとあたしとどっちが好きー?とか, おばあちゃんとあたしとどっちが好きー?とかね」
「えへへ」
「そういうときは迷うことなく,きみが世界で一番好きだよって答えてるけど,問題はだ,きみの妹が,お姉ちゃんとあたしとどっちが好きー? なんてきいてきた場合だ.お父さんはきみもきみの妹も同じだけ好きだから,どっちも好きだって答えるよ.でも,小さな子供ってそれじゃ許してくれないんだよね,わかるだろ?」
「わかるわかる!」
「しょうがないから,そういうときは,妹ちゃんのほうが好きだって答えることにするよ,それでいいかな? お姉ちゃんのほうが好きだなんて答えたらビービー泣いて騒いで大変なことになっちゃうからねぇ.ボンタンアメもう1個食べていいよ」
「わーい」
「というわけで,うそをつくのはイヤだけど,どうしようもなくなったら,お姉ちゃんより妹ちゃんのほうが好きって答えるからね,いいよね?」
「いいよー (もぐもぐ)」
「ありがとう! 愛しているよ! 残りのボンタンアメ,ぜんぶ食べていいよ!」
「わおーーーー!」

2022年再び

「ボンタンアメ・・・・」
「そういうわけで姉さんは快く承諾してくれていたのだ!」
「それ,承諾というより,餌付けっていうんじゃないのかな」
「もっとも,姉さんのことだから,妹がなんか父親を困らせることをやっていて,しょうがなく妹のほうが好きだって答えさせたんだろうって考えたのかもしれないけどね」
「たぶんそっちだと思うよ」
「それでだ」
「?」
「孫が生まれた.姉さんはママになった.きみは叔母さんになった」
「わおーーーー!」

2021年暮れ,孫1歳

「孫も同じことをやる可能性があるぞ,僕とママとどっちが好きなのー? とか,僕と叔母ちゃんとどっちが好きなのー? とかね」
「やりそうだねぇ」
「そういうときは孫のほうが好きだって答えることにするよ.すでに姉さんには承諾を得てあるよ.姉さんもそう答えてほしいとのことだ.ボンタンアメは今度なんか荷物を送るときに一緒に梱包するつもりだ」
「ボンタンアメはもう送らなくていいと思うよ」
「それでそれでだ」
「?」
「僕と叔母ちゃんとどっちが好きー? ってなったときも,孫のほうが好きだって答えることにするけど,それでいいよね?」
「いいよ,そう答えてあげて!」
「よしよし,そうしよう.ちょっとこれは胸が痛むんだよ,だって孫はきみの子供じゃないからねぇ.姉さんなら自分の子供が可愛がられるのは嬉しいだろうけど」
「私も甥っ子が可愛がられるほうがいいよ」
「よしよしこれで安心した! 愛しているぜ!」
「私も愛しているぜ!」
「それでそれでそれでだ」
「?」
「孫が2人3人4人と誕生する可能性もある.姉さんのところだって一人っ子にするとは言ってないし,きみだってママになる日が来るかもしれない」
「そうだね」
「そういうときどうするか考えていたんだけど,いちばん新しく生まれてきた子がいちばん好き,っていう設定にするよ.誰か生まれたら,いちばんの座を譲り渡してもらう.それはお兄ちゃんとかお姉ちゃんとかになった名誉の証なんだ,っていうことにするんだ」
「それ,いいやり方だと思うよ」
「もっとも,誰かとじぶんとを大人に比べさせてどっちが好きなのか,なんていうことを言うような子供に育たないよう,姉さんにしろきみにしろ,しっかりやってくれればいいわけなんだけどね.よろしくたのむよ!」
「ふふふ,私のときにはできなかったくせに」
「それを言うなって!」

そして未来へ

そういうわけで,小さな子供の心の中に隠れる意地悪な悪魔に,先手を打ってあるんだ.孫が何人登場しても大丈夫だし,曾孫だって何人登場してもOKだよ!

「Devil in Her Heart」はビートルズの2枚目のアルバム「with the beatles」の12曲目に入っている曲です.オリジナルはThe Donaysの「Devil in His Heart」です.

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