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ビートルズの映画『レット・イット・ビー』を初めて見た時の記憶,そして夏に公開予定の映画『ゲット・バック』への期待

今年の夏にはビートルズの映画『ゲット・バック』が世界同時公開されることになっていて,世界中のビートルズファンが公開日を楽しみにしています.私もたいへん楽しみにしています.

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この映画の元になっているのは,1969年,解散直前のビートルズを記録した映像です.
このときに撮影されたフィルムからは,半世紀前の1970年に映画『レット・イット・ビー』が制作され,公開されています.
今夏公開される『ゲット・バック』は,『レット・イット・ビー』公開半世紀を記念したものにもなっています(コロナで1年延期).

ネガティブな印象があるのはなぜか

『レット・イット・ビー』を観てネガティブな印象を抱いている人は珍しくありません.
私もその1人です.
そうなる理由について,たとえばビートルズ研究家の野咲良さん @nora_fabs さんがTwitterで簡潔に考察されています.

  1. ポールが演奏する重苦しいピアノ演奏から映画が始まること
  2. スタジオで撮影されたシーンの照明が暗いこと
  3. アナログコピーを経た解像度の低い映像がTV放送されたりビデオ販売されたりしていたこと
  4. あちらこちらでメンバーが愚痴ったりもめたりしているシーンが登場すること
  5. 解散直前の撮影という情報と結び付けて観てしまうこと

などが,わかりやすい例として挙げられています.
私も,こうした点がこの映画の印象を重たく暗くしていると思います.

一方で,私はこの映画を初めて観たときのことを覚えており,そのときの私は『レット・イット・ビー』が解散直前の撮影だとは知らず,また,冒頭のシーンを見損ねています.
さらに,そのときの世の中の標準的なテレビ画面で観たため,特に他の番組や放送と比べて解像度の低さが影響することもなかったのではないかと推測しています.
そうすると,上記5点のうち,私に当てはまるのは,「照明」と「メンバー不仲」だけということになります.
そういう状況でこの映画がどのように見えたのか,という一つのサンプルとして,今回はそのときのことを記録しておこうと思います.

世の中がビートルズに対して経験したものごとを,十数年遅れで体験している面があります.

1981年夏

1981年の夏,中学1年生の夏休み,13才になったばかりの私は,生まれて初めてビートルズのレコードをレコードプレイヤーにセットしてみました.そのレコードは私ととても仲の良かった(今も仲が良い)叔父のもので,イロイロ理由があって私の家にあったのです.4曲入りEPというフォーマットのものでした.

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1曲目の,イントロなしでいきなり始まる『オール・マイ・ラヴィング』に衝撃を受けた私は,その瞬間から現在に至るまで,この4人組の音楽を聴いて人生を過ごすことになりました.この人生が終わるとき,私はビートルズの音楽を聴くことができなくなります.

他にも何枚か,叔父が聴いていたビートルズのシングルがありましたが,私はこのグループの作品を全て聴いてみたいと願うようになりました.しかし,インターネットの無い時代,音楽情報を集めるのは簡単ではなく,手持ちの数枚のシングルレコードの袋の中に入っていた和文解説を読み,新聞に週に1度掲載されるFMラジオの演奏予定曲一覧の中からビートルズ関連の曲を探してはカセットテープに録音して聴き,という日々を過ごし始めました.当時,ジョン・レノン暗殺事件(1980年12月)から1年以内という時期だったこともあり,ラジオではビートルズ関連の小特集が組まれたり,ビートルズの曲が数日に1回は流れてきたりといった状況でした.

私にとってのビートルズは,「スーツを着てマッシュルームカットにしたイギリス人の4人組」という理解から始まりました.

レコード店での衝撃

しばらくして,レコード店に寄る機会があり,生まれて初めて洋楽レコードの並ぶコーナーに立ち入ってみました.そして「B」のラックに向かい,ビートルズのLPレコードを1枚ずつ手に取っては眺めてみました.

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「コレはうちにある4曲入りのと似たデザインのものだな」とか,

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「ジャケット右下に印刷された『Apple』って何なんだろう」とか,そういうことを考えつつ,ぜんぶ聴いてみたいものだと思いながらしばらくラックを漁っていると,

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『レット・イット・ビー』のジャケットが出てきました.

え"!

ヒゲを生やしている! ビートルズはこんな姿になったのか!

1960年代,ビートルズがヒゲを生やし始めたときに社会に衝撃を与えたという話を後から知りましたが,きっと13才の私が抱いたのと同じような衝撃を,1960年代の社会は受けとったのでしょう.

途中から観た『レット・イット・ビー』

それから数日後,夜中になんとなくTVをonしてみたところ,映画『レット・イット・ビー』が放送されていました.私が勝手に抱いていた「スーツを着てマッシュルームカットにしたイギリス人の4人組」ではなく,レコード店で見たジャケット写真の4人でした.

この映画は,ビートルズに対する私の勝手なイメージを片っ端からぶち壊してくれました.

ポールはジョージの演奏に細かく注文を出して,ジョージがブチッと切れ,リンゴは不機嫌そうにドラムを叩いていました.ジョンは仙人のような老婆のような風貌で「若者」という感じではなかったし.
(※そのときの私にはまだメンバーの顔と名前が一致していませんでした)
13才の私には重く息苦しい時間が過ぎて行きました.

しばらくして4人はビルの屋上に出て演奏を始めました.この演奏をしているときの4人は楽しんでいるようでもあり,先ほどまでの重く息苦しい雰囲気はどこかに消えていました.しかし,屋外での大音量での演奏を止めさせるために警察が乗り込んできました.
これも13才の私にとってはショッキングな場面でした.警察沙汰になるということは,泥棒とか殺人とかと同じカテゴリーの行為だということです.ビートルズが悪いことをしている!

なんて思っているうちに最後の『ゲット・バック』の演奏が終わって『これでオーディションに受かったかな?ははは』で終わりになりましたが,13才の私には何が何だかわからず,驚き,混乱し,悲しくもあり,その夜はよく眠れませんでした.

というのが,ビートルズに対しての予備知識がほとんどなかった私がたまたま途中から観た『レット・イット・ビー』の印象です.

この3年後に再びTV放送されて,そのときはビデオ録画もして繰り返し観たのですが,印象が大幅に変わることはありませんでした.

アルバム『レット・イット・ビー』に対する印象への影響

映画『レット・イット・ビー』に対してネガティブな印象を持ってしまったため,これのサウンドトラックという位置づけのアルバム『レット・イット・ビー』に対してもネガティブな印象を持って数十年が過ぎました.アルバム制作の紆余曲折についての情報もネガティブさを増幅しています.

映画『ゲット・バック』への期待

そういう状況で今年の夏に公開予定の映画『ゲット・バック』を待っていますが,この映画によって私は映画『レット・イット・ビー』やアルバム『レット・イット・ビー』に対する私自身が勝手に抱いているイメージを大幅に変えられるのではないかと期待しています.

これは私の偏った理解なのかもしれませんが,この10年くらい,「ビートルズの4人は実は最後まで仲が良かったのだ.必ずしも殺伐としていたわけではないのだ」という印象を持たせるような仕掛けがあっちこっちに見え隠れしているように感じられるのです.たとえば2年前の『ホワイト・アルバム』リミックス版リリースのときにも,「じつは仲の良かった4人」というようなメディア報道が主流だったし,生き残っているポールもリンゴも,ビートルズ時代のことについてポジティブなことを積極的に語っているし,その流れで新映画『ゲット・バック』もネガティブな印象を抑えられた作品になるのではないかと予想しているのです.

そうなると,すでに観たり聴いたりした『レット・イット・ビー』に対して,これまでとは異なる角度から捉えることができるようになって,今後の人生でビートルズを楽しむ新しい何かが見つかるのではないか,なんていうことを考えているのです.

というわけで,夏に公開予定の映画『ゲット・バック』がとても楽しみです.

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