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ダイアン・リネイの『ネイビー・ブルー』を聴きながら,東京オリンピック(1964)の頃の東京をイメージしてみる

1960年代前半のアメリカン・ポップスは好きなジャンルの一つです.
AppleMusicでこの時代のヒット曲を集めたプレイリストを見つけて聴いていたところ,ダイアン・リネイ (Diane Renay) の『ネイビー・ブルー』(Navy Blue)が流れてきました.

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●東京オリンピックの年の春のヒット曲『ネイビー・ブルー』

『ネイビー・ブルー』は1964年3月にアメリカでヒットした曲です.このときのチャートをみると,トップ3をビートルズの『抱きしめたい』,『シー・ラヴズ・ユー』,『プリーズ・プリーズ・ミー』が占めています.ダイアン・リネイの『ネイビー・ブルー』は6位に来ています.7位はビーチ・ボーイズの『ファン・ファン・ファン』です.

彼氏ができたのに海軍に入ってしまってなかなか会えなくてブルー,という内容の歌詞の中には,彼氏が東京からお土産と手紙を送って来た,という場面があります.横須賀あたりで米海軍の船から降りて東京見物でもしたのでしょうか? この時代,アメリカの人々は「Tokyo」がどんな場所だとイメージしていたのでしょうか?

1964年3月の東京は,秋に開催される東京オリンピックを控えており,新幹線は開業準備中,東京モノレールも開業準備中,高速道路網や羽田空港の拡張工事が進んでいました.高度成長まっただなか,工事現場のラジオからは,ビートルズやビーチ・ボーイズの曲といっしょにダイアン・リネイの歌声も流れていたのでしょうか.古い音楽を聴くとき,当時の光景を想像してみるのも楽しみの一つです.

●キス・ミー・セイラー

この曲がヒットし,続編として作られたのが『キス・ミー・セイラー』(Kiss me, Sailor)です.
ここまで「続編」として作られた曲は他にないんじゃないかっていうくらいの徹底っぷりで,海軍勤務の彼氏に会えないという設定も,海軍ネタのキーワードも,曲の雰囲気も,最後がスキャットで終わるところも共通しています.大ヒットとまでは行かなかったものの,全米チャートの30位以内には入っています.

●アルバム『ネイビー・ブルー』

この2枚のシングル(A面B面あわせて4曲)を収めて作られたのが12曲入りアルバムの『ネイビー・ブルー』です.
先行シングル海軍ネタ2曲のイメージに合わせ,ジャケット写真の背景カラーはネイビー・ブルー,海軍の制服っぽいデザインの衣裳を着たダイアン・リネイが浮き輪を抱えています.ジャケット裏の白黒写真では,船の甲板で手すりに肘をついた全身写真が使われています.

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7曲目(アナログ・レコードB面1曲目)『ベルボトムのズボン』(Bell Bottom Trousers),8曲目(同2曲目)『ソルジャー・ボーイ』(Soldier Boy)はカバー曲で,どちらも軍隊ネタです(ベルボトムのズボンは水兵の制服ズボンの形).

海軍ネタ2曲のヒット曲にこのアルバムでダイアン・リネイのイメージは固定したらしく,その後もあちらこちらで海軍の制服っぽい衣裳を着ていたようです.
Youtubeでダイアン・リネイを探してみたら,それなりに年を重ねた後のダイアン・リネイが,米軍退役軍人の集いみたいなイベントに呼ばれて歌っている動画をみつけました.

口パクではあるものの元気に動き回るステージでは,『ネイビー・ブルー』,『ソルジャー・ボーイ』,『キス・ミー・セイラー』という,彼氏が軍隊勤務っていう設定の3曲を歌っています.これができるのは世界でダイアン・リネイただ一人でしょう.

●その後のダイアン・リネイ

アルバム『ネイビー・ブルー』は結局,ダイアン・リネイ唯一のオリジナル・アルバムになりました.
その後のダイアン・リネイは,地道にシングルを発表しつつ,TV番組に出演したり,ショーをおこなったり,各種イベントに出演したりと,音楽活動を続けていた模様ですが,ヒット曲に恵まれることなく現在に至ります.

アルバム『ネイビー・ブルー』以降のシングル曲は,21世紀に入ってから2枚組アルバム『Somethings Old and Somethings New』に収められています.ビートルズの『イエスタデイ』もカバーしています.当時はヒットしなかったものの,いま聴いてみるとそれなりにいい曲だと思える作品もあります.『Please Gypsy』とか.

ダイアン・リネイはYoutubeに公式チャンネルをもっていて,ここには1960年代の『キス・ミー・セイラ−』の動画が公開されています.いかにも1960年代っていう,いい感じだ!

しかし,もっともヒットした『ネイビー・ブルー』の,当時の動画は公開されていません.他にもイロイロ動画を検索してみたのですが,当時のダイアン・リネイが『ネイビー・ブルー』を歌っている動画は見つかりませんでした.全米チャートでヒットした曲で,恐らくTV出演の機会も何度もあったはずですが,記録が残されていないのです.公式チャンネルにないのだから世界中の誰も持っていない可能性もあります.

●アメリカン・ポップスのアルバムとしておすすめ

アルバム『ネイビー・ブルー』に話を戻しますが,シングルが2枚出たから慌てて曲を追加録音してアルバムにした,という雰囲気ではなく,とてもよくできた1960年代アメリカン・ポップスの1枚になっています.
アップテンポの曲もあればスロウなバラードもあり,いかにも1960年代ガールズ・ポップという感じの曲もあります.
1枚,1960年代アメリカのガールズ・ポップのアルバムを聴いてみようか,という方にオススメしたい作品です.

CDではアナログ・レコード時代に収められていた12曲のステレオ版とモノラル版,それにボーナストラック3曲を収めた国内盤が2016年に発売されています.
Apple MusicとAmazon Musicには21曲入りの『The Very Best of Diane Renay』があり,この中に上記12曲が収められています.

2度目の東京オリンピックが計画されている今,前回の東京オリンピック当時にヒットしていた曲を収めたアルバムを聴いてみませんか?

ネイビー・ブルー

ネイビー・ブルー


●「音楽」カテゴリー

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