ことの発端は,5月の下旬に自宅敷地内で双頭のタンポポをみつけたことにはじまる.幼いころからタンポポに関心をもっていたこともあり,珍しい形態の花が自宅に生えてきたことに関心をもった.このときにはこれが「奇形」の一種だとは考えず,分化の最中に何かの拍子でこういうことが起きたのだろうと考えていた.
しばらくして別の個体が双頭の花をつけていることに気づいた.その後も双頭のタンポポが生えてきた.なんでこのようなことが起こるのだろうか? その理由を知りたくなった.そこで,タンポポの変異について情報を集めることにした.興味があるのは次の2点.
- どのようなしくみで双頭になったのか知りたい
- 遺伝子レベルの変異ならDNA分析で原因を特定したい(PCRなら大学にある)
まずはネット上の情報収集.情報を探っているいるうちに,「おばけタンポポ」と呼ばれるものがここ数年,増えているという説を知った.「おばけタンポポ」と呼ばれるタンポポは,「帯化(たいか)現象」と呼ばれる異常を示したタンポポのことで,キク科の植物ではときどき見つかる異常だという.以下のURLに,タンポポをはじめ数種類の植物が起こした帯化現象が写真とともに紹介されている.
帯化現象の原因は,植物の「成長点」と呼ばれる部分に生じた異常によるものだという.帯化現象については例えば以下のURLに説明がある.
上記URLをはじめ,帯化について述べたページによれば,帯化が生じるのは,
- 昆虫や細菌によって生長点が傷付けられた場合
- 遺伝子に変異が生じた場合
だということがすでにわかっているという.
また,以下のページによれば,ユリ科の植物では栄養過多な土壌が帯化を誘発するという.
そういうわけで,帯化は自然に生じる現象にひとつだと考えてよさそうだ.他にも
- 電磁波の影響
- 土壌汚染
という説もある模様.特に土壌汚染説は,2003年に全国ネットで放映されたTV番組が発端となって全国的に広がった模様(最初の放送は2003-05-26,ときどき続報が放送されてきた模様).
この番組では,帯状タンポポの発生原因と,ヒトの化学物質過敏症が,ともに「リン酸トリス」という化合物によるものではないか,との疑いを投げかけている.番組の模様を収録したYouTube動画が以下のURLからリンクされており,番組の内容も紹介されている.
番組の内容を要約すると,次のようになる.
- 化学物質過敏症のことを考えて建材を選び抜いて新築した家で,入居者が化学物質過敏症を発症した
- 自宅敷地の一角で,帯状タンポポをはじめ異常な植物がが生えてきた
- そこの土壌をサンプリングして分析したところ,「リン酸トリス」と呼ばれる物質が検出された
- リン酸トリスが植物に与える影響を,某私大の研究室に分析依頼したところ,リン酸トリスがサクラソウが帯化することが確認された
この番組では「リン酸トリスが帯状タンポポの原因物質」とは断定していないし,化学物質過敏症や帯化とリン酸トリスとの因果関係も明らかにしていない.
それでも結果として,この番組は全国的に帯化タンポポの知名度を上げたらしい.事実,この番組の内容を引き合いに出してきて帯状タンポポを話題にするページがいろいろみつかる.
たとえば,
- 奇形のタンポポ(2005-12-??)
- 奇形タンポポ (2009-05-01)
- 近年、室蘭で「奇形のクローバー」が目立つと聞いたのだが(2009-12-09)
他にも帯状タンポポの発生を報告するページが検索でみつかるが,
「帯状タンポポ発見→異常事態→環境汚染→人体への悪影響→タイヘンだ→思考停止」
というものが多く,帯状化の原因を特定する研究とか,帯状化した個体のDNAがどうなっているのか,という情報はまったくみつからない.どこかで公開されているのかもしれないが,雑多な情報に埋もれてしまって,今日の時点でみつかっていない.
その一方で,以下のような情報をみつけた.
日本大学生物資源科学部の浅野紘臣先生が主宰されている研究室のサイト.
ここには
研究の結果,帯化タンポポは遺伝しないことがわかりました。
と書かれている.しかしここに出ているタンポポは双頭とは違うタイプ.そもそもどのような研究が行われたのか不明である.
それ以前に,我が家の双頭タンポポが,帯状の一種なのかどうかも定かではない.
こういう調子なので,まずはどのタンポポが双頭だったのかわからなくなってしまわぬよう,双頭タンポポを植木鉢に植え替えることにした.原因追及はそのあとでやればよい.
これなら,仮にDNAレベルの変異だった場合,解析用にDNAのサンプリングはできる(植物からのDNA精製は未経験だが,どこかに実験方法が公開されているだろう).
次は,タンポポの研究や観察をしている人をみつけてイロイロ教えていただく段階である.いきなり質問状を投げかけるのは迷惑行為なので,まずは自宅の観察写真を公開して,その写真からこちらの状況を判断してもらうのがよいだろう.というわけで,はてなダイアリーを増設して,双頭タンポポの記録を公開.それがここ.
まずは帯状タンポポについての発見記録を公開されている,中山厚志先生(長野県で中学校の教員をされている方)に連絡.←昨晩
今朝,返事が来て,関連資料を送ってくださるとのこと.感謝.←いまココ
つづく.