千葉県市川市の 千葉県立現代産業科学館 には「現代産業の歴史」が常設展示されています.
今回は石油化学工業に関連する展示を紹介します.
●京葉工業地帯
千葉県の東京湾に面したエリアは埋め立てが進み,工業地帯となっています.
ここに海外から原油が運ばれてきます.
原油は産地によって含まれる成分の割合が異なります.
いずれも黒色で粘性の高い液状混合物です.
輸入された原油は沸点の違いを利用して数種類の成分に分離されます.そのために蒸留塔が用いられます.
こちらはコスモ石油(旧丸善石油)千葉製油所1号蒸留塔の模型(1/20)です.
1963年に完成した,我が国初の大型蒸溜塔です.
こうした装置が千葉県の工業地帯に並んでおり,千葉県全体の石油精製能力は日本全体の約15 %になります.
蒸溜塔の中は何段もの棚で区切られており,そこには液体と気体とを分けるための「バブルキャップ」と呼ばれる部品が取り付けられています.その模型.
蒸留塔で沸点の違いを利用して原油を分離して石油製品が得られます.
出光興産提供の「いろいろな石油製品」.
左から硫黄,アスファルト,C重油,A重油,潤滑油(工業用),潤滑油(自動車用),軽油,自動車ガソリン,ジェット燃料,ナフサ,灯油.
●天然に存在する香料と同じ化合物を石油から合成する
「においをかいでみよう!」のコーナー.
以下5種類の花の匂いを体験することができます.
- ハッカ(ℓ-メントール)
- スズラン(スザラール)
- バニラ(バニリン)
- バラ(シトロネロール)
- スミレ(α-ヨノン)
ここで公開されている匂い成分は,石油から合成されたものです.
天然の植物がもつ成分と同じものを合成できるのです.
●石油から樹脂をつくる
石油製品のうち,ナフサからは合成樹脂もつくられます.
●合成樹脂から日用品をつくる
合成樹脂は日用品の原料になります.
容器や食器などの日用品の大半は合成樹脂製です.
合成樹脂は乗り物のボディとしても使われています.
レーシングカーのボディは繊維強化合成樹脂でできています.
●化学繊維
合成樹脂を紡績して合成繊維がつくられます.
人類最初の合成樹脂は6,6-ナイロンでした.
6,6-ナイロン発明者のカローザスと,ナイロンストッキングを買うために行列する人々の写真.
高校化学の教科書にも載っているものです.
樹脂から繊維を作るための研究が進まなければ6,6-ナイロンが繊維として用いられることはありませんでした.
紡績の研究についても紹介されています.
6,6-ナイロンの成功により,人類は石油化学工業を発展させることになり,現在に至ります.
●合成樹脂のリサイクル
樹脂のリサイクルも実用化されつつあります.
飲料ボトルとして利用されているPETから様々な再生品が作られるようになりました.
●近くの展示
石油化学工業の常設展示の近くには自動車産業の展示もありました.
原油からガソリンを生産し,それを燃料に自動車が動きます.
また,発電についての展示もありました.
石油から得られる重油を燃やして熱を得てタービンを回し,発電するのです.
このように,2016年の各種産業の相互関係もわかるような展示になっていました.
取り扱っている範囲がとても広いので,一度にぜんぶ見るのではなく,何回かに分けて見学して,あとから関連情報を調べてみる,というのがオススメです.
●その他の展示
千葉県立現代産業科学館の展示品を紹介して行くとキリがないのですが,体験できる化学系の展示としては「人間電池」がオススメです.
銅,アルミニウム,亜鉛の板がそれぞれ2枚あり,両手で一枚ずつ手のひらをあてると,電圧が表示されるのです.
私たちの身体が電解質のタンクであることを実感する展示です.