新宿LUMINE 0で開催されていた「不思議で美しいミクロの世界展」を見てきました.
12月22日から1月4日まで開催されていた写真展でした.
顕微鏡写真に着色してアートにする
展示されている写真は私たちの身のまわりにある生き物や素材などを,自然科学研究に用いられている顕微鏡で撮影した後,人工的に着色したものです.
拡大倍率は様々で,光学顕微鏡で見える世界もあれば,電子顕微鏡でなければ見えない世界もあります.
写真にはそれぞれ「それが何のどの部分なのか」の説明が付いていました.
それを読まない限り,何の写真なのかを当てるのは難しいでしょう.
鉱石みたいに見えるこれは
鉱石みたいに見えるこれは,腎臓結石です.
シュウ酸カルシウムの結晶です.電子顕微鏡写真に着色してあります.
サンゴのように見えるこれは
サンゴのように見えるこれは,牛乳がヨーグルトに変化する過程です.
ピンクに着色されているのはカゼインのミセル.黄緑色の球体は,乳糖から乳酸を合成するバクテリアです.
タマゴの黄身か栗きんとんのように見えるこれは
タマゴの黄身か栗きんとんのように見えるこれは,プラスチック膜による分子のふるい分けです.
紫色をしているのがプラスチックの膜で,黄色い球体は膜にトラップされているイオンです*1.
枯葉から生えたキノコのように見えるこれは
枯葉から生えたキノコのように見えるこれは,夏場の浴室から取ってきたホコリです.
カビの胞子(オレンジ色のボール),花粉の粒子,植物のかけら(青,緑),ネコの毛(平べったい茶色),などが混ざっています.
洗剤による汚れ落としのイメージ図に見えるこれは
洗剤による汚れ落としのイメージ図に見えるこれは,セージの葉の表面です.
網状突起(紫色)の上に植物油(白)の しずく が乗っかっています.
写真展の元になった写真集
写真展はすでに終わってしまいましたが,今回展示された写真はすべて『不思議で美しいミクロの世界』(ジュリー・コカール著)に収められています.
この本にはこうしたミクロの世界の写真が100点近く収められています.
見ているのに見えていない
今回の写真展で,説明を読むことなく「それが何なのか」を当てられた写真は1枚もありませんでした.
また,写真展の元になった写真集をめくっても,説明を読むことなく正体がわかったものは数点だけでした: 生物学の教科書に載っている赤血球とか,ニューロンとか,サルモネラ菌とか.
その一方で,これまでの人生で研究材料として何百回も見てきた「凝集したDNA」の写真が何なのかはわかりませんでした.
セルロース,ビタミンC,ポリスチレンも,何度も何度も何度も見たり触ったりしているのに,その拡大写真が何なのかは分かりませんでした.
私たちが「見ている」世界の中には,「見ているけれど見えていない」ものが溢れているのです.
「行ってきた」ネタ過去記事
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*1:具体的にどのようなイオンを分離しているのかは説明がありませんでした.また,書籍の説明にも具体的な物質名は記されていませんでした.